2010/02
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[ #140 ]

 雑考28  グラッパ

 グラッパは特徴的香りのする蒸留酒で、私が興味をそそられる酒の一つです。


 

 一般には”粕取りブランデー”と称されるジャンルの酒で、イタリアにて造られる物がグラッパです。
 この粕取りブランデー、ワインをそれなりの規模で造っている国には大体存在するようで(流通に乗っているかどうかは別にして・・・)、ヨーロッパでは他に、フランスの”マール”、スペインの”オルーホ”、ギリシャの”チプロ”等々が存在します(他にも有りますが)。

 そしてグラッパの起源ですが、基本的には他のヨーロッパの蒸留酒の起源の延長線上に在ると考えて良いと思います。
 どういう事かといいますと・・・。
 ヨーロッパで蒸留酒が一般化する以前は、ワイン等醸造酒が飲まれていた訳ですが、特にワインはそこに含まれるアルコールのもたらす効用から、薬としても用いられ、またそれ故、聖なる飲み物とも位置付けされていたのでしょう。(キリストの血といった表現もそれ故でしょう)
 その聖なる飲み物の中から、より聖なる部分を純粋に取り出そうとして生まれたのが、所謂、アクア・ヴィータ=命の水=初期の蒸留酒ですよね。
 すると更にそこから・・・。ワインの元となるブドウ、そのブドウの中の、よりエキス分の多い部分、味の濃い部分(皮、皮側)や、より生命力に溢れる部分(種)から、アクア・ヴィータを作ればより生命力に溢れた聖なる(薬効の高い)薬が作られると考えるのは、道理。
 こうして、造られたのが初期のグラッパと考えて良いのでは、と想う訳です。

 それ故に、そこに各種の薬草等のエキスをさらに染み込ませた(アルコールによって抽出した)、薬酒も作られる。これがエリクシール=のちのリキュール。
 薬草系グラッパ、グラッパベースのリキュールが今でも多いのはその伝統、出自によるものでしょう。

 造ったのは、やはり錬金術師。
 (錬金術師をどう捕らえるか?   占星術師等と共に権力者に仕えるウィッチ・ドクター=伝統医的に捕らえても良いのでは?  アルノー・ド・ヴィルヌーヴ=リキュールの父や ノストラダムス=占星術師 ミカエル・サレルヌス=医師、錬金術師)(日本で言えば陰陽師や修験道師、密教僧?)
 時期は12世紀ルネッサンスとの関連を考えると、その辺り。

 
 しかしその後、16世紀の近代の目覚め以降、ワインの商品化、生産の規模拡大、王権の強大化等々の理由から、
ブドウやワインを造るブドウ農家、ワイン農家が、自分たちで作ったワインを殆ど口に出来ない、といった時代が訪れ、その結果、彼らが廃棄物であるワインの搾りかすから、自分たちの飲む安酒を造る様になる。それが、近代の”粕取りブランデー”
 フランス、ブルゴーニュのマールの出自はこの傾向が強いのでは?故にブルゴーニュでは蒸留器を載せた車が農家を廻る事が最近でもあるとか。また、樽熟成により、より味を良くしようとする努力とかもその現われでは?(少々、考察が必要ですが・・・)

 そして戦後。流通の発達、情報の氾濫、社会の安定・・・等により、より個性的な嗜好品を楽しめる、求める時代風潮により”粕取りブランデー”も安酒から個性的地酒に位置付けしなおされ流通に乗る。今のグラッパはそうした飲み物でしょう。

 さらに付け加えれば、グラッパの語源・・・。「グラッポロ」=ブドウの房の意からの説。「グラスパ」=絞るの意からの説。「グラッパ山」=ベネト州に在る山、あるいはその麓の村=バッサーノ・デル・グラッパから来たとする説があります。

       グラッパ    グラッパ系リキュール







 それはそうと、グラッパの名の村が有り。その名がグラッパの語源になったと聞くと・・・・・。

 行ってみたくなるのが、酒飲みの性というか、バーテンダーの性というか・・・・。

 で、数年前に行ってみました。


 バッサーノ・デル・グラッパ村は、水の都”ヴェネチィア”から北西に鉄道で約1時間の場所。私は逆にトレントから鉄道で入りましたが、このトレント~バッサーノ間の路線、ローカル線の雰囲気が車窓に溢れ、中々私好み。トレント駅でのバッサーノ行きのホームの判り辛さに困りましたが・・・。(そのホームだけ駅の外れにある。行かれる方は要注意)
 
 バッサーノに着くと、ヨーロッパの古い街らしく城壁(1辺、約500M)に囲まれた旧市街とその外に新市街といった造り。
 ただ、この村は城壁の外にも古い街並みが多いです。
 そして古くからの街らしく、水運の便が非常に良さそうなブレンタ川という名の川が流れ、その荷揚げ等、商業の中心だったと想われる辺りを見下ろす様にドゥオーモが聳え、そこに架かるのがヴェッキオ橋。
 この村の名物の屋根付き橋。

 そこから旧市街中心部方面に少し行ったところにグラッパ博物館が在ります。(ガイドブックだと橋の反対側になっていたのですが・・・。)この博物館、入場無料、グラッパに関する文献等も閲覧出来そうでしたが、イタリア語の読めない私には・・・・・。

 そして街全体の雰囲気は・・・。少々観光地化され過ぎとの意見も聞こえそうですが、私の様に海外に不慣れな者にとってはその分安心感も有り、丁度よい感じです。裏道等歩くと、石畳が自然石のままだったり、歴史を感じられいい雰囲気です。


 そして、勿論グラッパを飲み倒し・・・。
 樽熟成ものを奨められる事も多かったのですが、私の好みはやはり透明な物。
 グラッパの香りって、ある種この偏りが魅力だと想うのです。他の粕取りブランデーに比べ、ワインを絞り切らず残す工夫をする事が多いらしいのですが。その分、強烈に立ち上るフルーティーさ。そして、樽熟しないため不足する甘さの香り(カラメル系、バニラ系)。これが、魅力と想います。
 故に甘いものに併せると最高。スウィーツや砂糖をしっかり入れたエスプレッソに合わせて完成する、ある種、食中酒という言葉に対し、食デザート酒というか、デザート中酒というか・・・。故にリキュールにしても相性よし。そんな酒です。

   ヴェッキオ橋   ドゥオーモ   グラッパ博物館

 長くなりました。

 ますた

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