2010/03
27
[ #153 ]

 オリンピックの身代金  奥田英郎

             オリンピックの身代金

 オリンピックの身代金  奥田英郎  2008・11  角川書店
 ジャンル  エンタテイメント

 

 昭和20年の敗戦から昭和の終わり頃にかけ我が国は、奇跡の戦後復興と呼ばれる未曾有の経済発展を遂げた訳ですが、またそれと平行して・国土・自然・人身・人心・農村・地域社会・・・。の破壊が進んだ事も事実でしょう。
 そうした破壊をもたらした経済至上主義(資本主義、自由経済主義、グローバリズムと呼んでも良いか・・・)に違和感を感じた(乗り遅れた、馴染めなかった)若者等を引き付けたのが、当時の学生運動、左翼活動だった様にも思えます・・・。
 (壊れた地域社会の代用になったのが、左翼団体、右翼団体、宗教団体、企業・・等々であったといっても良いかも知れません・・・)
 またその後、学生運動、左翼活動が求心力を失う中で、その変わりに登場したのが、オウム等の新宗教であったのでしょう・・・。


 またこれらの現象は我が国だけでは無く、我が国に続いて急速な経済発展を遂げた多くのアジア諸国に於いても、似たような事が起こっている気がしますし。更に過去を振り返れば、キリスト教、イスラム教、マルクス主義等々も、行き過ぎた経済至上主義(貧富の格差の拡大した社会情勢等)を背景に現れ、拡大して来たのも事実でしょう・・・。



 前置きが長くなりましたがこの小説は、戦後復興の象徴とも言える東京オリンピックの開催を舞台背景に(物語の中心に据え)、その社会(状況)に肉親を失った主人公が、経済発展に突き進む社会(その象徴の東京オリンピック開催)に一人で戦いを挑み、壊れていく(敗れる)姿をエンタテイメント仕立てにしたものです。
 著者の前作”サウスバウンド”同様、作者の暖かい視点が物語全体を包んでいると思える作品で、私としては最近読んだエンタテイメント小説の中でもお気に入りの物です。

 また、私は60年台前半の東京は知りませんが(生まれていません)、その時代感あるいは昭和の空気も感じさせて呉れるお勧めの小説でもあります。

 ますた
 

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