2010/08
04
[ #202 ]

雑考39 マティーニ

 たまにはバーテンダーらしいテーマで書いてみます。

 「マティーニ」

 余りにも有名なカクテルです。故にレシピとか作り方、由来等々、語り尽くされた感も有りますし、また文献、ネット等を当たれば、恐らくそうした情報は溢れているでしょうから、ワザワザ私が書くほどの事も無いのかも知れませんが・・・。



 「マティーニ」、ご存知の様にジンとドライベルモットをステアーして作る、ショートカクテルの代名詞とも言えるカクテルです。また最近、アメリカ等では、ホワイトスピリッツをベースにした、ドライなショートカクテル全般を、マティーニ・スタイルとも呼んだりするようです。
 そうした面故か、アペリティフ・スタイルのショートカクテルの代表の様にも認識されています。

 しかし想うのですが”(ドライ)マティーニ”、かなりアルコール度数の高いカクテルです。これをアペリティフ(食前酒)としてすきっ腹に流し込むのが、果たして適当なのか・・・?
 
 食前酒の役割として私が考えるのは、胃袋を活性化して食欲を増し、より食事を美味しく頂けるようにする飲み物・・・。となると、マティーニでは少々強すぎるのでは・・・?と、想う訳です。
 私の記憶違いかも知れませんが、医療で胃液の分泌検査を行う場合、薄い濃度のアルコールを使用する事があるそうです。(7パーセント位?)
 となると、この程度のアルコール濃度のお酒が、食前酒には適しているのでは?等と想う訳です。
 (尤もアペリティフを、その基となったロシアの宮廷料理の食前酒のあり方から考えると、別の答えもありそうですが・・・。)
 
 ではマティーニ、どういったシーンに似合うのか、或いは何故これほど有名なカクテルになりえたのか・・・?


 私の考える結論からいいますと、マティーニは渇きを癒すためのカクテル。
 とは言っても運動後の喉の渇きの様な物では無く(そのような状況でマティーニなんて飲めませんよね?)、精神の緊張から来る、渇きを癒すのに最適な酒・・・・。
 それ故にニューヨークで持て囃されたカクテル・・・。カクテル発祥の地アメリカを代表するカクテル、カクテルの中のカクテルになりえたのであろうと想うのです。
 (確かオキ・シロー氏のカクテルをテーマとした短編集にも「ニューヨークのドライマティーニ」という作品がありました)

 では何故ニューヨークなのか?

 ニューヨークは金融の街。金融、動産、不動産、証券・・・・。金を直接やり取りする商売。それ故、交渉も非常な緊張を伴う・・。或いは真剣勝負の賭け事の如く・・・。
 そうした非常に緊張を強いられる仕事、交渉ごとから齎される喉の渇きには、甘ったるい酒、薄い酒では物足りない・・・。あくまで強く、ドライ、そうしてキリリと冷えた酒で無ければならない・・・。
 それが、マティーニ。
 それ故、戦場カメラマンでもあった”開高 建”氏も愛したカクテル(戦場の緊張からの開放のカクテル・・・)。
 「アパートの鍵貸します」で、ジャック・レモンが飲む酒・・・。


 しかしここでもう一つ。
 あくまで強く、ドライで、キリリと冷えた酒・・・。であれば、フリーザーでキンキンに冷やしたドライジンのストレートの方が相応しいのでは?ということ。
 確かに渇きを癒すだけであれば、その方が相応しい気がします・・・。
 では何故、ドライジンではダメなのか?


 昔、英国でジンの時代というのがありました・・・。
 資本主義が浸透し、労働者が過酷な労働を強いられ、その辛さを忘れる為にひたすらジンに逃げた時代。

 少なくとも英・米語圏では、ジンにはこのイメージが有るはずです。
 ジンは労働者の酒、ジンのストレートはアル中が飲むもの・・・・。(酒とバラの日々のリー・レミックの飲むジン等々)

 その点マティーニは、バーテンダーが1杯1杯、お客様の事を考えて造る物。
 (少なくとも昔は、バーカウンターで飲むカクテルには、高級なサービスのイメージが有ったはずです)
 故にマティーニ。

 つまりはホワイトカラーのドライジン。”ビジネス”マンにベストヒットの酒。金融街ニューヨークの酒。
 という事なのだろうと私は考えるのです・・・・・・。

 ますた

                   マティーニ

 

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