2010/08
28
[ #211 ]

 妖婦列伝  田村栄太郎

              妖婦列伝

 妖婦列伝  田村栄太郎  1960・11  雄山閣
 ジャンル  時代小説

  


 ~~列伝。といいますと海音寺潮五郎の名前が先ずは浮かびますが(武将列伝・悪人列伝・等)、これは田村栄太郎氏の作品です。
 
 ”妖婦”というのが良いですね。悪女でも無く、毒婦でも無く、妖婦・・・。

 内容は?といいますと。柳沢騒動であるとか、絵島事件、恋娘昔八丈、姐妃のお百(増補秋田蕗)、夜嵐お絹、高橋お伝・・・・等、江戸中期から明治初期にかけて世間を騒がせた女性、或いは女性が起こした事件に関する考察です。
 

 これらの事件、あるいは女性。恐らく、江戸の終わり頃から昭和の前期に掛けて殆どの日本人が認知していた事でしょう。
 それはこれらの事件が事件発生の後、”よみうり”であるとか芝居、歌舞伎、絵草子、講談、読本、戯作等々の題材となり、世間に知られ、或いは流布され、人々の記憶に定着していたのでしょう。
 そうしてその戯作化、芝居化の過程において事実から離れ、人々が望む方向に、あるいは共同幻想に合致する様に形を変えていく。
 もちろん、真実をそのままに小説化、芝居化出来ない状況も有ったでしょう(忠臣蔵や先代萩の如く)。
 ただ、その変化の仕方に日本人が無意識に好む物、倫理感、掟感の様な物見える気もします。

 またそれは、現代の都市伝説の発生、伝播の心理にも似通っている気もします。


 大分前置きが長くなりましたが、この本はこれらの事件をテーマとした当時の実録小説(戯作等)や芝居を、事実(当時の資料から事実と想われる事)と比較し、事件の主人公となった女性の心理や社会状況、社会心理を現そうとした本に思えます。
 そうして、こうした女性を生み出した底辺にあるのは、色(肉欲)と、欲(金銭欲、貨幣経済)であろうか?と書かれている気がします。

 私としては、当時(江戸末期から明治)の戯作や小説の頁も掲載され、興味深いです。また、この小説が書かれた当時(昭和30年代)の時代の空気も想像出来そうな気もしました・・・・。

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