2011/05
13
[ #289 ]

雑考55  扉(ドア)

 以前お客様に
 「バーの扉って、何故あんなに厳つくって、開け辛い扉が多いのですかね?」
 といった内容の事を訊ねられた覚えが有ります。

 最近は少なくなった気もしますが、確かにバーの扉(特にオーセンティックなんて冠がつくバーのドア)、しっかりした造りの物が多かった気がします。
 (因みに、拙店のドアは薄っぺらな物です)

 何故か?


 先ず第一に意匠の問題。

 BARという存在が日本にもたらされたのは明治期、19世紀の終わり頃。尤もこの頃、BARという文化がアメリカから西洋社会全般に拡がった時期でも有るとも言い得ましょうが。
 当然、日本にも西洋からもたらされた訳です。
 そうなると必然的に西洋風の内装、造り、意匠となる。

 それ程西洋を訪れた経験が有る訳では無いですが、それでも西洋の建物の扉、非常に頑丈そうな物が多かった印象があります。
 物理的に部外者の侵入を防ぐための物。といった印象を受けた覚えが有ります。
 詰まりは正統に西洋風の意匠を取り入れると、扉は頑丈に成らざるを得ないという事。
 (それに比べると最近はそうでも無いですが、日本の入り口扉、薄いですよね、引き戸だったり・・・。一寸前まで、田舎では鍵もろくに掛けず開けっ放しだったり・・・)


 後、考えられるのは、店内の静寂性等を維持する為。防音等考えるとごつく為らざるを得ないという事。
 (そうした意味でも、拙店は失格ですね・・・。下のスナックのカラオケの音とか、外の通行人の話し声が結構聞こえたりしますから。まあ場末の酒場という事でご容赦を・・・)


 そしてもう一つ。意識的に結界としてそうしてあるという事。

 明治に日本に入ってきたバーという存在。その後、日本的接客の要素を取り入れて今の様な形態・文化を築いて来たのでしょうが、その日本的接客の基となったのはやはり茶の湯の精神でしょう。

 茶室のにじり口同様の意味、ある種の入りにくさ。それは内側の空間、空気が、外とは切り離されている事の象徴の様にも想えます。
 世間の柵や、肩書き、地位、人間関係から、ある種隔絶されている空間。その隔絶を守る為の結界。


 最近ではファースト・フード店や、ファミリー・レストラン等々、兎に角入りやすい事を目指した物が多い気もします(自動ドア・看板等)が、そうした意味ではバーという形態、全く逆方向を向いているのかも知れません。

 それ故にバーの扉。扉自体は何の変哲も無くても、ある種の入り難さ、結界を感じさせるのかも知れません。
 
 またそれは、それで良いのかも知れません。
 そこは日本人。障子一枚、襖一枚で、結界が作れる(た)人々でしょうから・・・。
 (安い遊女屋なんて、屏風一枚が結界、何て事も成立していたそうですし・・・・) 


 故に私も他所のお店にお邪魔する時は、何はとまれ、扉の前で一呼吸・・・・・。


 ますた

 

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