2011/11
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[ #339 ]

奇想の20世紀  荒俣 宏

                 奇想の20世紀

 奇想の20世紀  荒俣 宏  2000・10  NHK出版
 ジャンル  世紀末

 

 「奇想の20世紀」というタイトルから20世紀をテーマに書かれた本という印象を受けますが、実は対象は19世紀後半(から20世紀初頭)の本です。

 どういう事か?といいますと。

 19世紀を、20世紀という”明るい未来”を提示出来た時代、あるいは夢見る事が出来た時代と定義付け、その視点から19世紀末の諸現象、諸物品等をモザイク的、あるいは博物館的に並べた本です。

 16の章で構成されており、各々の章にそれぞれキーワードが当て嵌めれれております。

 例えば・・・。

 ・「進歩」・「破滅」・「万国博覧会」・「エンタテイメント」・「スポーツと競争」・「発明と特許」・・・・、等々。

 そしてそれぞれの章毎に、キーワードに見合った図版・写真等が数多く掲載され、眺めて居ているだけで飽きない本です。
 その分、解説等余り穿ちはせず、本全体から世紀末という時代の空気を伝えようといった意図にも思えます。


 ではこの時代、19世紀末とはどんな時代なのか・・・?

 この本では初めにも書いたように、「未来」を”夢見る事の出来た時代”、”提示出来た時代”とまず初め(第1章)に定義付けしている様に想われます(その”明るい未来”のイメージは、2度の世界大戦でそれほど能天気に夢見れない事が判明するのですが・・)。

 またその提示装置としての「万国博覧会」、特に1867、1889、1900と3度に亘って行われたパリ万博にその世相、風潮が特徴的に現われているとの見方がされている様に想われます。



 では私の様にやや穿ち気味の人間が見ますと・・・。

 世紀末は近代から現代への端境期といいますか、今に繋がる”現代”というものが普及し始めた時代?(少し変な表現ですが・・・)

 化石燃料の利用に拠り圧倒的なエネルギーの使用が可能になった時代、商業主義の力が世間を席捲し始めた時代。(それらは文明とか科学技術とかプロテスタンティズムとかグローバリズムと言い替えても良いのかも知れません・・・)


 そう観ますと「万国博覧会」とは、現代(文明普及)の入り口の象徴。また言い替えますと、全ての(珍奇なる)物を見世物として成立させる装置とも言えるかも知れません。

 またこの本にも出ていますが、トマス・クック旅行社が観光旅行のシステムを築き上げたのもこの時期。
 この時期から世界の全ての風景は、観光地(見世物)という視点で観られ始めて様にも思えます。(クック社に関しては、バーテンダーの目から言いますと、飲酒の愉しみに代え旅行の愉しみを普及させようとした面、詰まり禁酒運動との連動、といった見方もしたくなります・・・)(ロートレックもアルコール依存克服の為、観光旅行を勧められたりしています)

 更にデパートメントストアの誕生とそれに伴う”万引き”という犯罪の誕生であるとか・・・。
 ともかく現代の諸現象、文明の誕生の時期がこの時代なのかも知れません。


 良く19世紀末=爛熟と退廃、といった言葉で表される気がします。
 化石燃料等のエネルギー、科学技術(文明という手段)等が人間が扱える力を飛躍的に増大させ、それが欲望の充足といった方向で使用された結果の爛熟、といえるのかも知れません。
(またその不自然さ故に自然回帰、肉体回帰の志向等も生み出された面も・・・)




 ま色々勝手な事を書きましたが兎に角この本、図版等が数多く掲載され、それこそ「博覧会」的「博物館」的で楽しい本です。

 こんな本を切っ掛けに、現代とか、文明とか、自然とか、未来とか、世紀末とかについて考えるのも愉しいのです。

 ますた

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