2011/12
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[ #350 ]

ウォーターシップダウンのうさぎたち  リチャード・アダムス

                 ウォーターシップダウンのうさぎたち

 ウォーターシップダウンのうさぎたち  リチャード・アダムズ  1980・06  評論社文庫
 ジャンル  児童文学

 基本的に童話や児童文学、ファンタジーといったジャンルの本は苦手なのですが、この作品は非常に魅力的に感じます。

 本のあとがきにも書いてあるのですが、1972年英国で出版された時に騒然たる話題をまきちらしたとある事も首肯出来ます。
 十分に大人の観賞に耐えうる小説と想えます。


 ストーリーとしては、主人公である”あなうさぎ”の「ヘイズル」が、友人のファイバーの予知夢を切っ掛けに友人数匹と村を離れ、幾つかの冒険を重ね自分達の村を築き、それを繁栄に導き、天に召される・・・といった内容で、こういった風に書きますといかにも児童文学的ストーリーと想えそうですが、その枠に収まらない厚みと魅力を感じます。

 その魅力・・・。切り口は幾つも在りそうです(故に厚みを感じるのでしょう)が、私が想うに此処に描かれている主人公ヘイズルの一生。これが”ごく当たり前の”成長譚となっていることに在りそうに想えます。
 それは人間に限らず、多くの哺乳類に当てはまる成長譚であり、生活の様に想えます。

 生き物としての、あるいは哺乳類、霊長目、人間の共通無意識の最大公約数に合致した当たり前の様に想えます。故に惹きつけられるのでは?と。

 オギャーと生まれ、自我が目覚め、幼児期の万能感を脱し、生まれ育った共同体を棄て、規制の枠組みから脱しさ迷う過程を経、社会性と知恵を身に付け、己の居場所を確立し、子孫を残し、年老い、天に召される・・・。

 こうした群れを作る哺乳類(人間も群れを作る哺乳類でしょう・・・)の一生の一つのモデルケース、或は理想型が描かれている気がします・・・。

 また、キャラクター設定も見事と想えます。

 村の首長として成長する主人公ヘイズル、対照的に独裁者としてのウーンドウォート、戦士ピグウィグ、知恵者ブラックベリー、預言者(神官?)ファイバー、語り部ダンディライアン・・・・・・etc。

 それは我々が採取を中心とした生活を(他の動物同様に)していた頃の、共同体の最低構成要素を想像させて呉れる気がします・・・。

 産業革命を経て(それはもしかすると不自然に”自己”の拡大を強制される時代となったのかも知れません)第二次大戦が終結し、現代となり、そこに人々が違和感を感じ始めた時代・・・・。

 そうした時期故に作者もこうした作品を生み出せ(し)たのかも知れませんし、また人々に評価されたのかも知れません。

 更に言えば英国圏、特にスコティッシュ、アイリッシュ等に残るケルトの民話文化の影響といった物もこの作品の背景にありそうな気もします(ビートルズの楽曲の一部の歌詞に感じられるような・・・)。



 何はとまれ色々の切り口で読める小説で、私のお気に入りの小説の一つです。

 ますた

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