2013/02
20
[ #465 ]

ワインのはなし 7

 前回、ベン・ハーという映画の中のワインなんて事を少し書きましたが、ベン・ハーのラストは、確かキリストの奇跡に拠りライ病者達が治癒するといったシーンであった様に記憶しております。

 

 そう、古代ローマ時代に置いての非常に重要な出来事の一つが、このキリストの誕生(BC4?)~キリスト教の迫害と普及(64)~公認(313)~国教化(392)・・・といった事で有るのは論を待たないと思います。
 (と成ると、ベン・ハーの映画は西暦60年代のローマ辺りが舞台でしょうかね?)

 そしてこのキリスト教の誕生と普及が後の西洋のワイン文化に多大なる影響を与えた事も確かでしょう。
 (勿論ワインだけでなく、すべての西洋文化に多大なる影響を与えていますが・・・)

 その辺り、つらづらと妄想を膨らませてみますと・・・。


 基本的に一神教というもの余り飲酒は奨励していません。と言いますか、酔う事を禁止していますよね。ユダヤ教にしろ、キリスト教にしろ、イスラムにしろ、基本的に酔っ払う事、泥酔する事は禁忌。特にシーア派のイスラムは飲酒自体禁止ですし、キリスト教も本来は非常に禁欲的。
 欲望におぼれる事、欲望自体をある種罪としている様思えます。
 この辺り、砂漠地帯を出自とする一神教に共通する事象でしょう。

 他方、原始宗教(アミニズム)の世界は飲酒に対して緩いですよね、酔っ払う事は神、或いは自然、向こう側(彼岸)に近づく事であり、そちら側を見る事でもあり、我が国などでは神は”酒を好む物、酔って騒ぐ事を好む物”といった認識が有った様に思えます。故に酒の基となった”サキ”という呼称もそうした意味ですしね。  


 そうした面では、本来ならキリスト教も飲酒全般に対して非常に厳しいはずなのですが、ここで有名な台詞が登場します。
 最後の晩餐でキリストの口から語られたという「パンは私の肉である、そしてワインは私の血である」という台詞。

 これによりワインはキリスト(神)の血、血液であるという重要な意味付けがされた訳で、これが後の世に与えた影響は大きいと思えます。
 後に修道院にてワインが積極的に醸される事に成るのもこの台詞故でしょうし・・・。もしかするとこの台詞が無ければ、イスラム教のように、飲酒が禁じられていたかも知れません・・・。
 (それでも基本的に、普段酔っ払う事は罪と見られそうです・・・。飲酒・泥酔の悪徳なんて意識もありますし、反動として酔った場合のタガの外れ方も激しい様にも思えます。特に英国人? 笑 )


 しかし何故キリストは、パンを自らの肉体と比喩し、ワインを血液と比喩したのか?

 想いますに当時、紀元前後のローマ帝国、その勢力圏も広く最盛期とも言える様な時代で有ったと思われ、特にローマ周辺に住むローマ市民、貴族等は豊かで贅沢な生活が出来ていたと想像できます。

 現にワインに於いて品種であるとか、年代、産地等に拠る味わいの違いを楽しむ、といった事が行われ始めたのもこの時代でしょう、また食事とワインの取り合わせといった事が語られるのもこの時代からでしょうから・・・。

 更に香辛料や贅沢な衣服・繊維、香料・・・等も各地(特に東方)からもたらされる時代。

 つまりはそれだけ流通経済、貨幣経済が発達、定着していたという事でしょう。
 そして無制限な流通経済、貨幣経済の発達は、また圧倒的貧富の差の拡大をももたらす。

 特にキリストの生まれたと言われるシナイ半島周辺はこの流通の結節点。
 そして(そこでの)貧富の差の拡大は、悲惨な(生物として不自然な)状況をうみだし、治安の悪化等社会不安、社会の混乱も生み出し、貧者には絶望をもたらす訳・・・で。
 
 そうした社会状況こそが、キリスト(教)を生み出したともいえると思えるのです。
 それは後に商業地として全盛を迎えたメッカがマホメットを生み出した様に・・・。

 また故にキリストは(汚く儲けている)商業者、パリサイ人を非難するのでしょう・・・。そして人々の根源的平等をも説くのでしょう。

 その結果として不自然な存在である貨幣を、或いはそうした状況を生み出した貨幣経済を非難し、より根源的な生活、自然な生活への回帰の重要性の象徴として、パンを自らの肉体ワインを自らの血=自然からの恵み、とあらわした様に思えるのです。

 つまり大いなる自然の摂理=神、或いは神の摂理。という意識があった様に思えます。
 そしてその恵である(麦から作られる)パンをその肉体、(葡萄から作られる)ワインという液体を血と表したのでしょう。


 最近ブルゴーニュ辺りでは、”ヴィオ”というより自然農法的ワイン造りを目指す人々が増えていますし。またそれ以外のヨーロッパや他地域でも自然農法に帰着する傾向も強くなっている様にも思えますが、この辺りももしかすると、根っこにヨーロッパの民間信仰やキリスト教、あるいはそれらが(またはそれらを)生み出したヨーロッパの無意識みたいな物や、ワインに対する意識といった物があるのかも?等と思ったりします。

 ますた

 

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