2013/05
02
[ #488 ]

映画 「天使の分け前」 The ENGEL'S SHARE

 映画「天使の分け前」を観て参りました。

 

    天使の分け前

 この題名並びに,職業柄(シングルモルト売らせて頂く事の多いバーテンダーとしては)観て置かない訳にはいけない映画であろうと時間を捻出し観てまいりました。

 シングルモルト・ウイスキーが前面に出る映画という物も珍しく、映画内でもグレンゴインの蒸留所美しい内部であるとか、バルブレア蒸留所の年代物(恐らく19世紀の物)の建物等が登場し、モルトウイスキーに興味が有る方、お酒好きの方には興味惹かれる映画であろうと想われます。


 では、映画全体の感想としてはどうであったか?

 全体を通しての印象は、やや統一感に欠けると言いますか、消化不良の印象。

 前半、特にオープニングの少年審判から~主人公に子供ができ~、といった辺りはスコットランド、あるいは英国圏の若者の置かれた現状、あるいはその厳しさの様な物が感じられ、緊張感が有ります。
 (英国圏では、”貧しい家庭やあるいは都市部のそうした家庭の多い地域で生まれ育った多くの若者には、まともな生活を送るチャンス、可能性、希望といった物はかなり少なく思える”、といった現状。先日なくなられた元英国首相のサッチャー女史の行ったサッチャリズム、あるいはほぼ同時に米国で行われたレーガノミクス。これらの負の遺産の現状とも言える物が垣間見える前半です。また、これを観ますと我が国の現状、及び未来といった事も考えさせられます。)


 それに比べると、後半~ラストはいかにも中途半端。コミカルさも中途半端ですし・・・。


 実はこの映画に関しては、鑑賞前に”不良少年がウイスキー造り通して人間的に成長し大人になって行く”といったストーリーを想像していたのですが、(後半の展開は)少しばかり違っておりました。


 では何故、私がそう思い込んでいたのか。

 (シングルモルト)ウイスキーというというもの(ワインや日本酒だってそうですが)、やんちゃで未完成な原酒が熟成により味わいのある酒に変わっていく事に一つの魅力があると思えます。
 正に人間の成長の様に・・・。

 ウイスキーのニューポッドにしろ、出来立てのワインにしろ日本酒にしろ、新酒の時には少々尖がり過ぎて灰汁の強いくらいの物の方が長期の熟成に耐え、よい物に仕上がって行く事が多いように思えます。

 逆に新酒の時から飲みやすい、若飲みに適した物は時間に負けてしまう事が多い様にも・・・。

 
 この、ボディー感が強く渋み等の個性の強い(強すぎる)原酒が、樽の力や時間の力、樽が置かれた環境の力等により味わいを深めてゆく。
 これが、ウイスキーも含めた酒(オールドヨーロッパの酒文化)の魅力でも有った筈ですし、シングルモルトの最大の魅力であったとも思えるのですが・・・。
 (故に、不良少年の成長譚として描かれた映画であろうと想像していたのです・・・)

 そうなりますとこの映画、その成長の以前で終了。(何だかね・・・・)
 


 映画の中で登場するモルトミルのレア物の樽、及びそのオークション付けられる高値・・・・。等々に鑑みますとこの映画、シングルモルト・スコッチウイスキーが商業主義(自由貿易主義)に取り込まれている事、現状に対し皮肉っている面も有るのかも知れませんが・・・。
 そうなると、それはそれでやはり少々分裂症気味にも思えます・・・。


 兎も角私としては少々消化不良。(まあそれも含め色々考えるのも楽しくは有りますが)

 どうせなら”トレイン・スポッティング”位に突き放した明るさが有った方が、スッキリする気がしました・・・。

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