2013/07
19
[ #514 ]

ビールのはなし 3

 先日”ビア・アリス”というイベントでビールを飲んで来ましたので、今回はビールのはなしを・・・。

 以前、旧ローマ帝国が勢力圏として手中にした地域は、ワインが造れる(葡萄栽培が可能な)地域に合致する、といった事を書いた覚えが有るのですが、物事には当然例外もある訳で、その一つがブリテン諸島=今の英国。
 (尤も今日では葡萄の品種改良や栽培技術の発達等々の理由に拠り英国でも結構良いワインも造られています様で・・・)
 では、古い時代のイギリス人は何を飲んで酔っ払っていたか?といいますとそれはエール(Ale)でしょう。
 此処でエール(Ale)とビール(Beer)の違いは?となりますと・・・。
 現代では、

 エール=上面発酵(高温発酵・常温発酵・短期発酵)のビール。イギリススタイルのビール。
 ビール=下面発酵(低温発酵・淡色系・長期発酵・・・・・)のビール。ドイツスタイルのビール。

 というのが一般的かと思います。


 そしてエール系は、比較的短い時間で発酵される故、原料由来のフルーティーさであるとか色々の味が残り易い、悪く言えば言い換えれば雑味が多い。また、昔だと品質が安定しにくい。
 ビール系は、逆により完全発酵的になりクリアで雑味が少ない、等々。

 尤もエール系もビール系も色々の場所で色々な物が造られていますので一言ではいえない面も有ります。

 また、エールは英語系を語源とし、ビールはラテン語系を語源とするともいえると思います。


 そこで英国圏の話に戻りますと、当時飲まれていた酒の主流は”エール”。つまり穀物を醸造発酵させて造った飲み物。
 寒冷な気候で葡萄が出来ない故、酒といえばエールだった訳ですね。
 その後、紀元前後からローマ人が侵入し徐々に支配下に置かれる。此処でラテン語系のビールという言葉も使われる事に成る。
 一説によるとこの当時の英国では、ビール=果物やハーブ由来の酒を表していたのではとも言われています。

 その後まもなくローマ人はブリテン諸島から撤退(400年頃)。(やはりワインが出来ない土地に長居をする気は無かったのかも知れませんね? 笑 )
 更にその後、英国はノルマン人に侵入されるのですが、その後しばらくビールという言葉が使われなくなったという話が有ります。
 そしてビールという言葉が再登場し、それが指し示すのはホップを利かせたエール(主として外国人、ヨーロッパメインランド向けであったらしい)。
 更に後に、下面発酵ビールが普及するようになり、現在のようにエール=上面発酵系、ビール=下面発酵系に適用される様になり現在に至る・・・。と、これが大雑把な英国圏のビール(という名称の現す酒)の歴史ですかね。
 詰まり英国圏でビールの言葉が現す物は、果実等の醸造酒 → ホップの利いたエール → 下面発酵のビール・・・と変化したという事。
 (ジンジャービア、ジンジャーエール、ルートビア、バーレーワイン何て物も有りますし、中々面白いといいますか、難しいといいますか・・・)


 閑話休題、こんな感じで英国圏ではビールが指し示す飲み物の意味は微妙に変化していったりする訳ですが、その点エールはエールとして変らない訳で、結局昔から英国圏では、酒=エールという事もありそうです。

 それは我が国で酒の言葉が表すもの=米の酒・日本酒であり、ローマ文化圏では、酒=ワインで在る様に・・・。(the days of wine and roses 酒と薔薇の日々のwineが酒と訳される如く)

 言い換えると、我が国では酒と言えば日本酒が絶対視されていて、ローマ圏ではワインが絶対視され、英国圏ではエールが絶対視されていた、と言い表しても良いかも知れません。

 
 実はこれって結構意味が在る様に思えます。

 昔、それこそ昭和30年代以前の我が国では酒=日本酒な訳で、例えば神社に供える酒=日本酒、三々九度等の儀式で使われる酒も当然日本酒。またそうした酒に対して、やれ吟醸がどうしたとか精米歩合がどうとか、アル添だ、純米だ・・・・。なんて事は言わなかった(今でも言わない気がします)様に思います。
 早い話、酒は酒。であったと。
 その後、今の様に細かいスペック等を一般人まで口にする様になったのは、日本酒という物を”相対化して見る”ようになった故かとも思えます。

 そこで英国ではエールを絶対視していたという事になるのですが、それ故にヨーロッパ人とは異なり、ワインを相対化して視る事が出来た訳ではないかと思える訳です。それが18~19世紀頃にワインのテイスティングなり批評なり飲み方なりを提唱・確立したのが英国人であったという事に繋がるのだとも思えるのです。(当時、シャンパーニュを特別で高級な酒として”発見”するのも英国人ですし)(現在だとその分野はパーカーポイント等、米国主導という気もしますが)(あるいはAOCの規格でフランスが主導権を取ろうとしているか?)

 またそれ故英国で飲まれていたエールも時代と共に単なる酒として画一化の方向に向かったとも思えるのです。
 例えば18世紀頃に誕生し盛んに飲まれていたポーターも、英国では1970年頃には殆ど絶滅したという事もそうした理由に拠る様に思えます。
 (我が国で所謂清酒以外の日本酒が一時期略絶滅しかかった様に)

 また逆にその後、世界的に色々のタイプのワイン・ビール等が造られる様に、流通に乗る様になって来る。
 世界的に地酒ブーム様な情況に。

 一つの転換点があったのかも知れません。
 それは絶対的な物の消滅という事。(勿論、情報の氾濫や流通の発達を遠因として)

 現代という事なのでしょうね。

 
 ビア・アリスで色々の種類のビールを飲みながらそんな事を考えておりました。

 ますた
  
 

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