2014/01
08
[ #570 ]

昨年読んだ本から

 昨年(2013年)に読んだ本で印象に残った物から何冊か。

    


 先ずは思わず衝動買いしてしまったこの本。

      パリ

 パリ、娼婦の館 メゾン・クローズ   パリ、娼婦の街 シャン=ゼリゼ    鹿島 茂


 19世紀半ばから20世紀前半のパリ、パリが正に”花の都”呼ばれていた時代。
 3度の万博の開催~爛熟の19世紀末~ベル・エポック~エコール・ド・パリ~、といった時代のパリ。
 実はそのパリ、花の都であると同時に世界的に知られた娼婦・売春・エロスの街でも有った訳ですが、その辺りを見事に描いてある2冊です。
 19世紀末パリ&娼館(=遊郭)がテーマという事で衝動買いですが、して良かったと思える2冊です。

 パリ=娼婦の街という視点、余り語られる面も無いかも知れませんし、信じたく無い方も有るやも知れませんが、そんな物で・・・。重商主義以降のパリはバブル経済で繁栄したとも言えますし、また資本主義の発展は大量の娼婦を生み出す訳なのですから。
 結局、資本主義はすべての文物・事象を商品化してしまうシステムであり(例えば、単なる生活の場である風景をも観光資源という商品にしてしまう様に・・・)、当然、女性、或いはその”性”その物も商品化=娼婦化してしまう訳です。更に貧富の差の拡大、一次産業の地位の相対的低下は農村の娘を街の娼婦に仕立てる訳で・・・。

 それはさて置き、当時のパリの娼館やその文化の我が国の江戸期の遊郭やその後(明治~昭和初期=この本のパリと同時代)の遊郭との類似や異差なんて事も考えられて、非常に面白い本でした。

 しかし鹿島茂氏の著作は好きですね。著名なフランス文学者でその広範囲かつ深淵なる知識を感じさせて頂けるにも拘らず、私の様な浅学・無学の徒でも理解し易い文章。知性の成せる技ですかね。

 という事で、昨年は他にも氏の著作を何冊か読んだり・・・。例えばこれも良かったですね(図書館本ですが)

 明日は舞踏会   明日は舞踏会




 これ以外で印象に残った本と言えば・・・・・、図書館本で中途半端に古いですが・・・、

 先ず1冊。

      木村政彦

 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか     増田 俊也


 お客様のお奨めで読みましたが、面白かったですね。
 格闘技雑誌の連載を加筆訂正し1冊にまとめた本という事で、確かに格闘技マニア向けといった面は有りますが、格闘技に興味の無い方が読んでも十分楽しめる本と思えました。

 内容は、”恐らくは史上最強の格闘家、木村政彦”の生涯を追う事に依り、近代の総合格闘技の成り立ちや、その中心的位置に有ったとも言える我が国の柔道の成立過程等を書いている物です。
 そして、そこから多くの事が読み取れるのです。
 強さを求める男のサガで有るとか、格闘技界周辺の多くのこと、魑魅魍魎、等々。
 例えば昨年メディアを騒がせた日本柔道界のゴタゴタ、この遠因が、講道館や全柔連の成立過程や”全柔連=一流派である講道館”と成っている現状、等々から推察出来たり。
 また、力道山=金信洛が、戦後、自らが成り上がる為に格闘技を利用した事。その為のプロレスの立ち上げ。その周りに蠢く魑魅魍魎(TV・新聞・興業師・米国人プロモーター・ヤクザ・マフィア・実業家・政治家・・・等々)。
 この辺はロバート=ホワイティングの名著「東京アンダーワールド」を彷彿とさせて呉れます(というか、並行して読むと楽しそうです)。

 東京 東京アンダーワールド

 そして木村政彦はその力道山の成り上がろうという欲望の強さに敗れてしまったのであろうという事実。
 他、大山倍達=崔永宣の事等も興味深いですし。

 兎に角、大宅壮一ノンフィクション賞&新潮ドキュメント賞の両受賞が納得できる濃さでした。




 ついでに、この本も・・・。

     暴走する文明

 暴走する文明   ロナルド=ライト


 何はとまれ、装丁=表紙が良いですね。(笑)

 人間を”裸のサル”と言ったのは確かデズモンド=モリス。”パンツをはいたサル”と表したのは栗本慎一郎。開高健は”退化した二足歩行のサル”と呼んだかな。
 そうした視点で見るとこの本は”文明という名の暴走列車に乗ったサル”ですか。

 人類は自らが作り出した文明という暴走列車に乗り、滅亡に向けひた走っているのでは?といった内容です。
 その左証として、メソポタミアで起こった農耕が周辺地域を塩害により砂漠化してしまった事であるとか、イースター島の人々の滅亡を挙げます。
 また近代西洋文明は、新世界からの徹底した略奪(強奪)で成り立ち、化石燃料に依り維持されているだけの物に過ぎないと喝破します。
 私としては少々見方の異なる面や不満な面も有るのですが、今の(文明=人類の欲望や利便性を達成するための手段、その象徴的存在とも言える原発とその影響が言われる)時期に読んで良い本と思えました。 




 小説(フィクション)としては、この本。

  地獄へ堕ちよう

 さあ、地獄へ堕ちよう     菅原 和也


 著者の若さの故か、プロット等に拙いと思える面も多いのですが、それを補うだけの魅力を感じた本です。
 その魅力とは、1頁目から濃厚に漂う”夜の空気”といった物ですね。
 私も一応は夜の世界の住人な訳で、この空気のリアル感は魅力でしたね。


 また以前アップしたこの本も。



 この辺りが昨年印象に残った本です。
 今年も良い本に出会いたい物です。 

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