2015/09
29
[ #758 ]

遅ばせ乍

 遅ばせ乍、今(第153)回の芥川賞受賞2作品を読了しました。



            文芸春秋


 因みに選評は未だ読んでおりません。

 



 早速ですが読後感等を思い付くまま少々記してみたいと思います。



 又吉直樹氏の「火花」

 読み始めて先ず感じたのが、読みやすい小説らしい小説という事。私小説的形態ということで我が国でよく書かれてきた小説らしさを感じるといいますか。更に芸人が書かれた(主人公の私)小説ということで、その点でも個人的には思うところも。
 まあ、芸人もそうでしょうがバーテンダー(水商売)なんて職業も正業では無い訳でして、いわば河原者といいますかやくざ者といいますかはぐれ者といいますか・・・・。どちらにしろ真っ当な生き方では無い訳でして、その辺り、特に先輩との会話などに「なるほどなるほど・・・・」と感じる部分も・・・・・。
 そんな感じで読み終えて見ました。

 そこで感じたのは、よい意味でも悪い意味でも詠みやすい(普通の?)小説という印象。また故に引っかかる物が無いといいますか(まあ、故に良く売れたのでしょうが)。
 言い換えれば・・・、私小説形式ということで我が国で良く書かれるタイプの小説~~と記しましたが、過去のそうした作品と比べると迫力不足の感は否めないと思えるのですよね。

 なんといいますか、いろいろと掘り下げる事が出来そうな素材は多く散りばめれれている印象なのですが、その分逆に薄っぺらく感じてしまうといいますか。
 そういえば以前読んだ宮部みゆき氏の”模倣犯”にも少しにた印象を感じた記憶があります。あれも確か売れた小説でしたが・・・・、読みやすいのですがあまり印象に残らない作品という感じ。
 もしかするとこの辺りがいかにも”現代”なのかも知れないな?という印象。
 ネット等で情報はが溢れ返っている状況で情報収集は昔に比べ格段に安易になりましたが、逆に個々の情報に対し掘り下げて考えることがし難い状況となり、全てにおいて浅薄化してるといいますか・・・・。
 また、割と古い言い回しや言葉、表現、熟語等を気を使って選択されて印象も確かに有り、悪くは無いと思うのですが全体を通してみるとその部分が少々浮いている印象もかんじました。

 なんといいますか、普通のよくりそうな小説で、悪くは無いのですが芥川賞といわれると、少々物足りないというのが正直なところですかね。



 そうしてもう一つの受賞作、羽田圭介氏の「スクラップ・アンド・ビルド」

 読み始めて感じたのはある種の「毒」といいますか、そうした物を描いている作品なのであろうという印象。
 言い換えると現代の毒といいますか。

 勿論、その毒は別に現代特有の物ではなく我々皆が内包している毒とも言えそうではあるのですが、人々が生存競争に残る為の毒といいますか。

 しかしやはり作者は現代故の”毒”といった物を描きたかったのかと思えるのです。

 そこは主人公”健斗”の思考パターンといいますか台詞、内面的つぶやきに良く現わされている気がするのですよね。
 個々の文節、思考等は論理的整合性が有るのだが、結論、あるいは全体で見ると非常に利己的で悪意的であるという物。
 なんといいますか、最近しばしば耳にする、いわゆる官僚答弁とか東大話法とかディベートで使われる言い回しとか・・・・。
 そんな言い回し、思考パターン。あるいは、その様なもの・・・・。
 一寸違うかも知れませんが・・・・。

 なんといいますか主人公の思考等から私が思い出したのは、「無知は悪意より悪し」という言葉。
 部分部分の論理展開は正しそうに思えるのですが、結局主観のみ、自分が全てであり社会性といった物は無い訳で、結論的には悪意的になるという物。
 これも結局、分かり易い理論展開や情報のみを収集し組み立てた物で、結局知識の集積ではあるのかも知れないが知性とか知恵といった物には到達できないといいますか、逆の方向に行くといいますか。
 なんといいますか薄っぺらさ故の毒というか無自覚な悪意といますか。

 おそらく著者はその辺りを描いたのだろうな?と印象を受けました。




 今回の2作品、個人的には共に現代情報化社会(この言い回しもふるいですね)の齎した浅薄さを感じる作品という印象。
 羽田氏は意識的にそれを描き、又吉氏は私小説を描いた結果として読者(私に)それを感じさせたのかな?
 なんてね。
 ということで、芥川賞らしさを感じるといいますか、好みは羽田氏の作品ですかね。


 さて、各選者の選評を読んでみましょうか・・・・。

 


 追記

 芥川賞が2作品同時受賞ということが何度かありますが、そうした時共通の物なんて事もかんがえましたね。

  

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