2016/07
12
[ #843 ]

今年前半に読んだ本から・・・

 今年前半に読んだ本から印象に残った物を少しばかり(今回はフィクション中心に・・・・)。

 



 先ずはこの本。


       壇ノ浦夜合戦記


         壇ノ浦夜合戦記     光明寺三郎 訳


 前半が”壇ノ浦夜合戦記”後半が”大東閨語”という内容です。

 そしてこの前半の”壇ノ浦夜合戦記”なのですが、内容はといいますと・・・、壇ノ浦で平家が滅亡したその夜、源氏の陣屋内にて義経と建礼門院徳子との一戦が有ったのでは無いか?という仮定の下、其れを漢文にて書き下ろした物です。
 (おそらく原作は18世紀の後半に書かれ、19世紀前半化政期頃?に書き下ろし文とされ流通し、明治になり不敬として発禁、そして昭和の40年代にこのようなかたちで出版された物と推察します)

 まあ、いわば艶笑文学(江戸期のポルノ小説)というやつですね。其れを書き下ろし文とし、更に現代語訳も付けて有るという形式。言ってみれば春画の漢文版といいますか・・・・・。  
 (江戸時代は春画も笑い絵として認知されていましたし、こうしたポルノ的な物も書かれていたようで、おおらかな時代ですね)
 
 何だポルノ小説か・・・・?と言われそうですが・・・・、これが漢文書き下ろし体ですと、中々格調高く感じると言いますか、下衆ばった感じがしないのです。

 もっとも原作の作者の漢文が良いというのが最大の要因でしょうが・・・・。

 因みに原作者は不明ですが、一部では頼山陽では無いかとも言われています。

 確かにそういわれると・・・・・・・、 笑 。


 どちらにしろ良い文体の漢文で書かれるとポルノも格調高くなるということを実感させられる本でした。

 (因みに後半の大東閨語は、壇ノ浦夜合戦記よりも早い時期に書かれた物と思われます、また作者も不明。内容は歴史上の著名人の性癖を漢文で書かれた物で、同じく書き下ろし文として記してありますが、これは壇ノ浦夜合戦記に比べますと・・・・・、上品さに欠けますな・・・・ 笑 )
 
(お客様にお借りした本でした、感謝です)



 現代の小説ですと、この本が印象に残っています。
 

        太陽の棘

 
         太陽の棘   原田マハ



 「原田マハの小説、面白いですよ・・・・・」と進めてくださるお客様が何名か有りまして、それならばと図書館で何冊か借り出して読んでみたのですが、この作品が最も印象に残っています(気に入りました)ね。


 実話を基に書かれた小説で、舞台は終戦直後の那覇。
 焼け跡となった那覇郊外の丘の上に絵の好きな沖縄人が集まり芸術村を造り活動していたという事が有ったらしいのですが、そこの人々と、沖縄に赴任してきた米軍の若い軍医(精神科)の交流を小説として描いた作品です。

 装丁の絵もそこの画家が軍医の肖像を描いた作品だそうです。

 この作品の魅力、もちろん基となった話の良さが第一でしょうが・・・・、私が魅力を感じたのは、絵画という芸術作品、あるいはそれを製作する(絵を描く)という行為そのものの葛藤?を見事に描いていることでしょうか・・・・・。


 そう、(絵画等の)藝術作品には二つの位相があると言えそうで・・・・、一つは純粋な絵、美しさ等追求して書かれた物、あるいはそうした行為。もう一つは商品(売り物、現物資産、値段)としての絵画。

 言い換えれば、画家が描きたいから描く作品・行為、と、売る為・金儲けの為に描かれる作品・行為・・・・。
 (この二つの位相はやはりどこまでもついて回る気がします、また、藝術以外でも・・・・・)

 そして私などはやはり最初の理由。芸術家が描きたかった絵、描きたくて描いた絵、あるいはそうした行為により惹かれるわけです・・・。
 (もちろん商業アートの魅力を否定するつもりもありませんし、その辺りにも魅力を感じる訳ですが・・・・、たとえばロートレックとか・・・・、また、描きたいから描いた作品より、仕事として描いた作品のクオリティーが高いのが”プロ”である、といった意見もあるでしょうし・・・・・)

 そしてこの小説、その辺りを見事に描いている小説という印象でした。
 まあ、私が沖縄に惹かれる面が多いので寄り魅力を感じた面も有るやも知れません。


 それと原田マハ氏の作品、これも面白かったですね。


       キネマの神様

 

   キネマの神様


 映画好きのおっさんと、アメリカの映画評論家(後半まで正体は不明)の映画に対する評論合戦といった内容なのですが・・・・、良かったですね。

 レベルの高い評論はそれだけで作品と言えそうですし(まあ、小林秀雄なんてそうした存在かも知れませんしね)、何より、映画なり絵画なり小説なり・・・・を観たり読んだりして、それに対し会話、評論をしあう、と言う行為、楽しいですよね(相性の合う相手と、という前提は必要そうですが・・・・、また、そうした物に対する愛情の存在は更に大前提でしょうが)。

 とにかくそうした行為の楽ししさ、魅力を感じさせてくれる小説でした。



 またこの小説も印象に残っています。


        対岸の彼女


  対岸の彼女     角田光代


 
 小夜子という若い主婦、そのパート先の一見パワフルに見える社長、葵。その昔の友人ナナコ。この三人を中心にした小説で、一言で言えば中学時代のいじめに拠って生き辛さを抱えている女性があがきながら社会で生きていこうとしている事をテーマにした作品・・・、というとえらく暗そうですが、そうでも無いのです。
 ナナコという女性のキャラクターが効いている気がします。


 またこうしたテーマの小説というと、若い頃に読んだ天童荒太氏の「永遠の仔」という小説と比べてしまいます。
 似た形式で書かれている気もしますし。

 永遠の仔が、虐待を受けて育った男の子二人(+女の子一人)が主人公で男性作家。「対岸の彼女」がいじめを受けて育った女の子二人が重要な存在で女性作家。

 そして、虐待もいじめも言ってみれば同じく強烈なる不条理。
 そして、(現代)社会と言うもの不条理の連続とも言えそうで・・・・・。


 何といいますか男性と女性の差異を感じる2作品。

 興味深かったですね。そして共に印象に残る小説です。


 まあこんな感じで相変わらず乱読の日々です。





 追記

 
 他、北森鴻と言う作家の作品も結構印象に残っています。
 短編のミステリーの名手という印象で上手いな・・・・・、という印象です。

 また、この作者の作品に、(非常に感じの良い)香菜里屋(カナリヤ)というビア・バーを舞台にした作品が何冊かありまして・・・・。
 実はこれが個人的には一寸複雑な気持ちになる訳です。
 はい、カウンターの内側に立っている人間と致しましては・・・・・(と言うことでバーやバーテンダーをテーマとした小説等は殆ど読まないのですが・・・・)。
 特にこの方の作品のお店、言ってみれば”(ビア)バー・カナリヤ”、拙店の名前がバカナリヤ。更に複雑な訳です・・・・ 笑 。
 おまけに馴染みのお客様に同じ苗字の方まで・・・・・ 笑 。
 

 とまあ、相変わらずの戯言でした。
 

 

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