2016/07
26
[ #848 ]

瀬戸内モダニズム周遊

 先日図書館で借り出したこの本、中々興味を惹かれる本でして、少々その感想等を・・・・。

 その本はこちら・・・、


        瀬戸内モダニズム周遊


 「瀬戸内モダニズム周遊」   橋爪紳也



 何はとまれ、このタイトルと装丁に惹かれ借り出した本なのですが、色々と興味惹かれる本でした。

 先ずは惹かれましたこの装丁が良いですね、この分野の第一人者”吉田初三郎”氏の観光鳥瞰図ですからね。

 内容はと言いますと、大正から昭和初期にかけわが国に観光ブームが訪れる訳ですが、その観光ブームを”瀬戸内”と”モダニズム”という2つのキーワードを切り口に多面的に論じてみようという物です。

 私自身、瀬戸内で生まれ育ったこともありますし、またこのモダニズムあるいはそうしたことが喧伝された大正~昭和初期の建物に惹かれる面もありまして、正にツボ嵌ったという訳です。


 そして読み進めるにつれ観光立国を目指す現在のわが国の在り様および観光ブームと往時のそれの余りの類似性に驚いたり楽しくなったりと・・・・。

 たとえば昭和初期の観光ブーム、国立公園という世界基準の公園の制定により地域のブランド化がされた事をきっかけに沸騰する面が有るのですが(また故に地域おこしとして制定を促す運動が各地域で行われたり)、これは現在の世界遺産等の登録運動と瓜二つに思えますし、また格地域における観光開発のやり方も同様に・・・・。
 地域の風景・景観・神社仏閣・歴史・民話・伝統・工場・盛り場・等々・・・・・を観光資源として開発。更にレジャーランド等の建設。
 そして各種イベントの開催(往時では博覧会、共進会etc、現在では各種グルメやスポーツイベント等々)。
 国を挙げて外国人観光客の誘致を推し進め、それに対応するホテル等の建設、等々・・・・・・。
 また、船旅のブームなんてのも・・・・。、
 まさに約100年前と同じことを現在もやっているのだと実感させられます。


 またそうした行為、一言で言ってしまえば(少々不遜な言い方ではありますが)、「軽薄」と成りますかね。

 勿論、現場で苦労された方々の行動や地域おこしの想い等は軽薄とはいえない様に思えます。
 しかし、この観光ブームを俯瞰的(それこそ鳥瞰図的に?)に見た場合、やはり軽薄という印象が拭えないのですよね。


 まあ、”ブーム”というものは押しなべて軽薄なものではあるわけですしね・・・・。

 また、(物見遊山や近代)観光と言う行為自体が言わば生産性の無い行為で、言ってみれば軽薄な行為と言われても仕方ない面が強くあるとも言えそうですし。
 現実に当時もそう認識されていた面もありそうでして・・・・、この本に記されていたことによれば、当時、観光産業のみで成立していると言っても良い”別府”という街。ある識者は別府を”煙突の無い街”評価したそうですが、その意というのは、工場の無い街であり生産的行為は行っておらず、タダタダ人様の財布の小遣いをあてにして飯を食っている・・・云々、と。

 (まあ、非生産的、非実利的行為が遊びであろうし、また上手くすればそれが文化ともなりそうで、結構個人的には好きなのですがね・・・・ 笑 )


 更に言えば、近代と言う存在自体が実は軽薄ともいえそうでもありますしね。
 (「近代の夜明けと共に世界は軽薄の炎に包まれた・・・・云々、・・・」といった言い回しもありましたし。
 (誰だったかな?橋本治か?)

 実際当時でもそうした見方はあった様で・・・、この本に紹介されています「モダン讃岐」という雑誌、その創刊号に編集者がこの様な意味なる創刊の辞を載せているのですが・・・・、
 「浅薄なるモダニズムは真のモダニズムにあらず・・・云々・・・・」
 詰まり当時、モダニズムには浅薄というイメージがもたれていたと言うことでしょう。

 (まあ、モダニズム、場合に拠っては、また捕らえ方によれば、伝統的な物事を否定する主観的思想であり、とにかく新しいことをよしとする風潮でもありますからね・・・・、まあ、浅薄と言われても仕方ない気も・・・・・・)


 実際、近代化、あるいは近代観光ってやはり浅薄・軽薄に堕し易いともいえそうで。


 例えば、当時、また現代でも、地域の祭りや盆踊りが観光商品として存在感を放っていますが、近代以前、それらの行為は地域の人々にとって、先祖供養であったり、自然に対する感謝であったり、祭司的であったり、儀式的であったり、ハレとしての重要な日であったり・・・と、気域の行事として重要な意味を持っていた筈ですが、近代(観光)というもの、それらの多くの意味をすべて無視し、あるいは無理解とする立場において、単に観光資源としてしか評価しないわけですね・・・・・。
 更に言えば近代化と言うもの、言わば資本主義化でもあり、結局のところ全ての物事に対し、商品価値というスケール以外をあてはめ無い訳ですから・・・・、そりゃ軽薄ですわな・・・・(それらの行為物事に内包された多々ある意味を理解出来ないって・・・・そりゃ浅薄といいますか、軽薄といいますか・・・・・)。


 そう、そして言ってみれば、この商品価値でしか判断できない・経済理論優先の先にあったのが、わが国の大陸への進出であり、満州事変~日中戦争~太平洋戦争~敗戦・・・。という一連の流れにつながっているとも思えるのですよね・・・・。

 実際に西洋でも、爛熟と退廃の19世紀末の先に第一次大戦があり、喧騒と金融バブルのジャズエイジの先に第二次世界大戦が来たともいえそうですしね。


 もしかすると、軽薄・浅薄なる社会風潮の先には地獄が口を空けて待っているのかも・・・・・、何てことも考えてしまいましね・・・・。

 特に今朝なんて、いやなニュース(介護施設での大量殺人事件)を耳にしたこともありまして、こんな話しになってしまいました。



 それはさておき、この本、版が小さめ&白黒の印刷と言うこともあり、見えにくいのがネックですが、多くの資料も掲載されていますし、非常に魅力的な本なのですよね、特に呉や高松の当時の花街の事や、各種ホテル等の建築物などの資料は正に私好み、この企画で博物館展示なんてしてもらえませんかね?といった内容でした。

 


 追記、そういえば北海道の某所では新たに伝説を創作(捏造?)しその文脈にて祭りを行い観光客を集めているとかいないとか・・・。正に・・・・。といった印象ですね。
 (しかし、アイヌとの関係やその存在はどう表しているのでしょうか?)
 

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22時すぎに 本が好き!運営担当 さんから

2016/09/25(日) | URL | #-

2016/09/25 - ■■■

 営業担当様、コメントありがとう御座います。早々に覗かさせていただきます。

10時すぎに ますた さんから

2016/09/26(月) | URL | #-

2016/09/26 - ■■■

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00時すぎに 本が好き!運営担当 さんから

2016/10/03(月) | URL | #-

2016/10/03 - ■■■

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