2017/02
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[ #908 ]

サンダカン八番娼館

 昨年末辺りから少し古めの本を読み直したりしていたのですが、其の中の一冊です。

 まあ、馴染みのお客様等からは「いかにもマスターの読みそうな・・・・ 笑 」、なんて言葉を頂きそうな本ではありますが・・・。



         サンダカン八番娼館


             「サンダカン八番娼館」   山崎朋子 


 です。

 

 


 所謂”からゆきさん”という言葉を世間に定着させたのも、もしかするとこの本かも知れないといわれる著名な作品。

 あらてめて読み直してみるとやはり名著の一つにあげられる作品では無いかと想います。


 此処最近、割とこういった女性に関する本も多く出版されるように成っている様にも思えますがその走りとも言えそうな作品でもあります。
 こうした売笑婦をテーマとした小説やノンフィクション、云ってみれば虐げられた女性という視点、或いは男性=悪という切り口で描かれている作品が割りと多い印象も有るのですが、この本前書きではそうした視点(思想)が結構強く感じられる面もあります。
 (所謂フェミニズム視点といいますか・・・・、まあ、70年代前半の作品でもありますし、副題に底辺女性序史ともありますしね)

 しかしこれが読み薦めていきますとそうした物が気にならないといいますか、薄っぺらく感じるくらいの迫力といいますか、そうしたものを感じる作品です。

 特に、元からゆきさんである”おサキ”さんからの聞き書きの迫力といいますか・・・・、現実故の存在感といいますか、体験された方の優しさといいますか・・・・。
 兎も角、この聞き書き、或いはおサキさんの語りを活字化出来たことがこの本の全てといっても過言では無いかも知れません。

 特に、昔の話を聞きに来たであろう著者の正体を薄々感じつつもあえて質問しないその優しさといいますか・・・、其のあたり正に(古い)日本人の美徳といいますか、惻隠の情といいますか、この部分だけでも読んで良かったと思える、というと言い過ぎですかね?

 まあ、兎にも角にもこのおサキさんという老からゆきさんの空気が素晴らしいのです。


 そして、前書きを読むと、少々フェミニズム的視点が強く感じると書きましたが、後書きにはまた違ったといいますかもう少し俯瞰的見方もちゃんと記してありまして・・・・。


 そう、結局彼女達の様な存在を生み出したのは、所謂近代化(市場経済主義、自由主義、資本主義・・・・)、更に云えば経済という怪物といいますか商業主義であろう事もきされておりました。またその中心的存在が福沢諭吉の様な自由主義シンクタンクであろう事も・・・。
 (そういえば我が国の最高額紙幣の肖像が福沢諭吉に成った頃から急速に新自由主義が進展しバブル~格差社旗に突き進んでいる気も・・・・ 笑 )


 そう、世間でかしましい所謂”従軍慰安婦”の問題も、加害者日本、被害者朝鮮女性という視点では実は本質的な事がかえって見えなくなる気がします、特にこの”からゆきさん”という存在を合わせて考えれば・・・・・。


 とまあ、いろいろ書きましたが、やはり名著の一つでしょう・・・・。




 追記

 ついでと言っては何ですが、この作品を基とした映画のDVDも観てみました・・・・。

 おサキさん役の田中絹代の演技は見事といいますか、雰囲気有りましたね。


 唯、全体としてみるとやはり原作には及ばないといいますか、少々残念といいますか。

 どうもノンフィクション作品を原作とした邦画、良い作品に仕上がらない様で・・・・。
 結局、商業作品、商業ベースという視点、くびきから逃れられない故なのでしょうね。
 (同時に収録されていた予告編の映像等観ますと特にその印象が強いです)


 まあ、商業主義の限界というか軽薄さというと言い過ぎかも知れませんが・・・・・。
 ただ少し考えても良い時期かな?という気がするのも事実。


 はい、相変わらずの戯言ですな。

 
 

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